ゾレアとは
ゾレア®は、もともと重症の気管支喘息や特発性蕁麻疹の治療に使われていた薬ですが、2019年12月に季節性アレルギー性鼻炎の治療薬としても承認され、健康保険適用で12歳以上の重症、または最重症の方の治療を行うことができるようになった最新のアレルギー治療薬です。
ゾレアは従来の抗アレルギー薬の内服で治療効果が得られない患者様や、抗ヒスタミン薬による眠気が業務の障害となる自動車運転などを職業とする患者様に対して有効な薬剤で、スギ花粉によるIgE抗体(免疫グロブリン抗体)に対してピンポイントで結合し作用する分子標的薬の一種で、一般名をオマリズマブと言います。
スギ花粉症限定となりますが、毎年2~5月の飛散時期限定で、皮下注射による投与を行います。スギ花粉の抗体にピンポイントで働きますので、従来の治療法では改善を望むことができなかった患者様にも症状軽減が期待できる治療法ですので、ゾレアによる治療が可能かどうかの確認のためにも、費用面なども含めて一度当院にご相談ください。
従来の治療法
花粉症は、身体中の血管の周辺に存在するマスト細胞が、アレルゲンに反応してヒスタミンを放出することによってアレルギー反応を起こすことから、このヒスタミンをブロックする抗ヒスタミン薬が従来のアレルギー治療の主流でした。
しかし、アレルギー反応の要因はそれだけではなく、様々な要素が絡みあっていると考えられ、その他アレルギーを起こす物質であるロイコトリエンに対する抗ロイコトリエン薬、アレルゲンそのものに身体を慣らしていく免疫療法などの薬物治療のほか、外科的治療としては、アレルギーの情報伝達にかかわる知覚神経の一部を切除する後鼻神経切除術、下鼻甲介の粘膜をレーザーで焼いてしまうレーザー治療などがあります。
抗IgE抗体治療とは
季節性アレルギー性鼻炎をお持ちの患者様の体内には、IgEという糖タンパク質が健康な方より多く存在することがわかっています。IgEは免疫グロブリンEの略で、アレルゲンが体内に侵入すると、免疫細胞の一つであるBリンパ球が反応し、IgEが産生されます。
IgEはマスト細胞(肥満細胞)の表面に付着しアレルゲンとマスト細胞の橋渡しをします。
つまり、IgEにスギ花粉などのアレルゲンが付着することで、IgEはマスト細胞に刺激を与え、マスト細胞が、ヒスタミンやロイコトリエンといった細胞間の情報伝達をつかさどるケミカルメディエーターといわれる物質を放出し、アレルギー症状があらわれます。
ゾレアは、このIgE抗体にピンポイントで結合し、アレルゲンとマスト細胞との橋渡しを防ぐことでメディエーターを放出させないようにする働きをする、分子標的薬で、重症のスギ花粉アレルギーの方に対して大きな治療効果が期待できます。
ゾレア治療の対象となる方
花粉症の重症度が「重症」「最重症」に相当する方
花粉症の重症度は、「軽症」「中等症」「重症」「最重症」の4段階です。重症度は、1日のくしゃみの回数、鼻をかむ回数(鼻水)、鼻詰まり(鼻閉)の程度で決まります。
たとえば鼻閉が1日中続いていれば、くしゃみや鼻水が少なくても最重症、くしゃみまたは鼻水が1日21回以上であれば、鼻閉がなくても最重症、口呼吸が大半であればくしゃみや鼻水は21回未満でも重症、くしゃみや鼻水が11回以上であれば鼻閉がなくても重症と分類されます。
スギ花粉アレルギーである方
ゾレアによる治療はスギ花粉症の治療のみが対象となります。そのため、アレルギー検査によってスギ花粉が陽性となるかどうかを調べます。アレルギー検査は血液検査で、血中のIgE抗体の量を計ります。IgE抗体は、アレルゲンによって異なるため、何のアレルギーに対する抗体なのかを特定可能な、特異的IgE抗体検査を行います。これによって患者様がどのような物質でアレルギーを起こすかを確認できます。季節性のアレルゲンだけではなく、ハウスダストなど通年性アレルギーについてもこの検査で確認できます。
その上で、血中にすべてのIgE抗体がどれほどあるかを計る総IgE検査も実施し、アレルギーの程度を調べます。
従来の治療法で十分な効果を得られない方
まずは、抗ヒスタミン薬の内服、ステロイドの点鼻など、既存の薬物治療を1週間以上行って、その効果が十分にえられないことを確認します。
こうした治療を1週間行った後、1日のくしゃみ、鼻水(鼻をかむ)の回数、または鼻詰まりで口呼吸をしている時間という重症度の要素が「重症」または「最重症」であることもゾレアによる治療の条件となります。
その他
- 12歳以上である方
- 体重20~150kgの範囲内
- 血清中総IgE濃度は30~1500IU/mLの範囲内
※妊娠中・授乳中の方は必ず事前に医師にご相談ください。
また以下のケースに当てはまる場合には投与不可と判断する場合があります。 - 総IgE値が30~1500IU/mLの範囲内にあることが絶対的条件です。そのため、重症度が高すぎて総IgE値が1500IU/mLを超えてしまうと治療を受けることができないことがあります。
- 体重は20~150kgの範囲内と決められており、この体重と総IgE値を使ってゾレアの投与量が決められるため、体重が重すぎて総投与量が許容量を超えてしまうと、治療を受けることができないことあります。
ゾレアを使用した治療の流れ
初回受診
初回には、まず前提条件であるスギ花粉によるアレルギー性鼻炎の症状が「重症」または「最重症」に相当するか確認するための検査を行います。また、症状が副鼻腔炎など他の疾患に由来するものではないことを鑑別するための検査を行うこともあります。 検査後、既存の治療を試みるため、抗ヒスタミン内服薬や、ステロイド点鼻薬などを処方し、1週間以上服用・使用を続けていただきます。
2回目受診
既存の治療薬の服用・使用が完了したタイミングで2回目の受診となります。治療ガイドラインに沿って、既存の治療薬の効果が十分でなかった、またはみられなかったことが確認できた場合、採血して総IgE検査と特異的IgE検査を行います。
血液検査の結果は数日後となります。検査結果から、ゾレアの投与が可能か、投与量、投与間隔、それらの条件による自己負担額などが算出されます。必要に応じて、これらのご相談のために3回目のご来院をお願いすることがあります。
3回目(もしくは4回目)受診
ゾレアの皮下注射による治療を開始します。患者様の状態によって、同時に抗ヒスタミン薬の内服治療を併用することがあります。その場合は抗ヒスタミン薬の処方を行います。
それ以降
ゾレアによる治療は、原則としてスギ花粉の飛散時期に対応して、2~4週間おきに皮下注射を行います。決められたタイミングごとにご来院いただき、1回につき75~600mgのゾレアを投与します。
この治療は、症状をすぐに治める対症的なものではなく、即効的な効果はありません。なお現在服薬中のお薬に関しましては自己判断で服薬をやめたり減らしたりせずに、医師の指示をまもって中止・継続してください。
ゾレアの副作用
ゾレアの一般的な副作用には、頭痛と鼻閉感(鼻が詰まった感覚)があります。さらに注射した部分の発赤が認められる場合もあります。
重篤な副作用は稀ですが、まったく起こらないわけではありません。
ショック、アナフィラキシーによる呼吸困難、立ちくらみ、失神、じんましん、かゆみ、のどの腫れといった症状が起こる可能性があるため、注射後15分ほど院内に滞在していただき経過を観察します。
ご帰宅後に気になる症状があらわれたら、すぐにご連絡ください。