メニエール病とは
メニエール病は内耳に起こる疾患で、難聴、耳閉感、耳鳴りといった耳の症状のほかに、めまい、吐き気・嘔吐、ふらつきといった症状があらわれることが大きな特徴です。これは耳の中でも身体の平衡感覚をつかさどる内耳の異常によるものですが、発症や増悪には心身の疲れ、ストレスといった要因が大きくかかわっています。女性が2対1程度と多く、年代では30~50歳代に多い疾患です。
メニエール病の原因
メニエール病は、内耳のリンパ液の分泌が増え、平衡感覚をつかさどる平衡器官がむくむことが原因で発症します。しかし、なぜリンパ液が増えるのかについてはいまのところ原因がわかっていません。ただ、発症・増悪の要因としては、ストレス、疲労の蓄積、睡眠不足などが考えられており、発症に対する不安によってまたストレスがたまり増悪するという悪循環に陥るケースもあります。
メニエール病になりやすい人
以下のような方はメリエール病を発症しやすい傾向にあります。
- 30~50歳代の方
- 正確が几帳面
- 真面目でストレスをためやすい
- 疲れをためやすい
- 慢性的に睡眠不足が続く
- 気圧の変化に晒される仕事についている人
など
特に仕事関係の悩みを抱えていてメニエール病を発症してしまう人は多く、以前は比較的若い女性が多い疾患というイメージでしたが、近年では閉経前後の更年期の女性や高齢者、男性の方にも多くみられるようになってきました。つまり、年齢にかかわりなくストレスをため込みやすい、またうまく発散できず、身体的影響にまで及ぶ場合、メニエール病を発症し、発作を繰り返しやすいと考えられています。
メニエール病の症状
回転性めまい
めまいには、自分のまわりがクルクルと回るような回転性のめまい、雲を踏むようなふわふわした浮動性のめまいがあります。メニエール病の場合、一般的には回転性のめまいが多く、立っていられないほどの症状があらわれることもあるのですが、個人差があり浮動性のめまいに襲われる方もいます。発作は数分から数時間程度続き、不定期に繰り返します。
吐き気、嘔吐
めまいによって平衡感覚がおかしくなり、吐き気をもよおし、実際に嘔吐してしまこともあります。
難聴(聞こえの低下)
めまい発作の前に左右どちらか片側の耳の聞こえが悪くなります。特に低音域難聴が特徴です。発作が治まると難聴も治まることが多くなっています。
発作を繰り返すようになると、だんだん聞こえない音域も中音域から高音域までわたるようになり、反対側の耳にも難聴が及んでくることがあります。
耳鳴り
キーンという高音性の耳鳴りが多いのですが、一方でブーンというような低音性耳鳴りやザーといったような音も聞こえることがあります。耳鳴りは続くこともありますが、めまい発作の前から強くなり、発作が治まると改善するパターンがあります。
メニエール病の典型的な症状は、回転性のめまいをともなう難聴、耳閉感、耳鳴り、吐き気・嘔吐などの症状ですが、内耳にむくみがおこっているかどうかがポイントで、患者様それぞれで大きく症状が異なることがあることも診断を難しくする大きな要素です。
メニエール病の検査
問診
まずは問診で、症状がいつからおこったか、持続時間はどのぐらいか、どのような症状がどの程度の時間続くのかなどについて詳しくお訊きします。
聴力検査
どの程度聴力が低下しているかを調べる検査を行います。メニエール病の症状は様々で、難聴を自覚しないこともありますが、聴力検査によって隠れた難聴が発覚することもあります。検査日によっても変化があるため、何度か検査をすることが大切です。
眼振検査(がんしんけんさ)
めまいがおこっている時には、眼球が激しく動いてしまうことがあります。赤外線カメラを使用し、患者様の視線の動き、揺れを観測することで、異常な眼振がないかどうかを検査します。難聴の自覚症状で来診された方でも、眼振検査によって隠れためまい症状がないかどうかを確認するためにも必要な検査です。
平衡感覚検査(へいこうかんかくけんさ)
目を閉じた状態で足踏みをすることで、身体のバランスの状態を調べます。脳の機能に障害がないかどうかなどがわかります。
温度刺激検査(当院では行っておりません。)
耳に温水や水などを入れて半規管を刺激し、平衡感覚が正常に働いているかどうかを調べる検査です。
これらの検査の他に、隠れた器質的疾患がないかどうかを調べるため、血液検査、CTやMRIなどの画像検査、鼓膜の検査などを行うことを検討する場合もあります。
メニエール病の治療
まずはメニエール病の発症・増悪要因であるストレスをコントロールするための生活改善が大切です。自分なりのストレスコントロール法や、食事による疲労・睡眠不足の改善などを是正する生活指導を行います。
その上で、対症的に内耳のリンパの分泌過剰、それによるむくみをおさえるような働きをする内服薬による薬物治療を行います。
ストレスが強い場合、時期を限って抗不安薬や精神安定薬などを処方することもあります。これらの治療が功を奏しない場合には、外科的な手術を検討する場合もあります。